COLUMN

Yui Matsumoto

「MUNI」プロジェクト発足から約4年。
まずは初めての製品として発表された『ライトベル』について教えてください。

自転車が好きな人の中には『できるだけスッキリ乗りたい』というニーズがあるんです。
たとえばハンドルまわりだと、ライトとベル。
どちらも必要なものですが、ちょっとゴチャゴチャ載ってるな、って思いませんか?

言われてみればたしかに、ハンドルバーは洗練されたラインの細いパイプなのに、
その上に丸いものや四角いものを強引に取り付けているように見えてきますね。

そこでライト(補助灯)とベルをひとつに集約して、ハンドルバーに沿うようにデザインしたのがこの『ライトベル』です。
単にシンプルなだけじゃなく、つけることでちょっとしたアイキャッチになることを狙っています。

それにしても、ほんとにスッキリしますね。
ここまでコンパクトにするのは大変だったんじゃないですか?

従来のライトのサイズや形状は、結局はバッテリーの大きさによるものなんですね。
『ライトベル』ではこれを充電式(スマートフォンなどでおなじみの micro USB タイプ)にして小型化しました。

また、充電式にしたのは、持ち歩いて繰り返し充電して使っていただくことで、
製品と長くつきあってほしいという願いもこめています。

最近は、盗難の心配もあって、
自転車の補助灯はとりはずして持ち歩くのが普通になっています。
この「ライトベル」はポケットに入れてあるだけで気持ちが楽しくなるような、
愛着のわくデザインですね。

おもちゃの鉄琴から着想した、コンパクトなベル

ベルとしても、これまでになかった美しさがあります。

自転車用のベルは、かなり長いあいだ進化がなくて、今もだいたいお椀型ですよね。
でも、音が鳴るのならお椀型である必要はないんじゃないか、
ハンドルバーに沿わせるようにつくれるんじゃないか、というのが出発点です。

それから、自分たちで鉄パイプを切ってみたり、社内で金属加工をお願いしたり、いろいろと試作をはじめました。

ほんとうにゼロからのデザイン作業ですね。

OGKには昔『OGK baby』っていうラインがあって、子ども向けの鉄琴をつくってたんですよ。
その鉄筋のサンプルが社内にあったので、音板をひとつひとつはずして、ハンドルバーに沿った形に曲げて、
どんな音が鳴るのかを試していったんです。

鉄琴!
たしかに完成品にもどことなく鉄琴の名残があります。

自転車用のベルは音の大きさがJIS規格で定められていて、これをクリアするためにはある厚み、
ある質量が必要だということがわかりました。
でも、ベルの音板を大きくするには、ライト側の充電池を小さくしないといけない。
プロトタイプをいくつもつくって、やっと、連続2時間点灯できるライトとJIS規格を満たす
音量のベルが両立するバランスを見つけたんです。

なるほどー。
ライトとベルをひとつにするのに、
誰も経験したことのない大変なせめぎあいがあったんですね。

【モバイルスタンド】
持ち歩きたくなる質感の、手軽な「ちょい置き」スタンド

『ライトベル 』の次に発売した製品も、ありそうでなかったアイテムですね。

『モバイルスタンド』といって、持ち歩く自転車用スタンドです。

スタンドって、持ち歩くっていうイメージがなくて、
むしろ自転車に必ずついている部品の一つという印象ですが。

それが、『スタンドをつけたくない』っていうかた、結構多いんです。
本格的なロードバイクなのでスタンドをつけないかたもいますし、
街乗り用のシティ車でもつけていないかたがいらっしゃいます。
スタンドは基本的には別売りのものなので、
せっかく気に入ったデザインの自転車を買ったのに似合わないものをつけたくないな、
ってことなんだと思うんですが。

実際、スタンドなしでも案外なんとかなるのですが、帰りにちょっとコンビニに寄るときとか、
立てかけられる場所がないときとかは困りますよね。

なるほど。
ちょっとしたときにバッグから出して使う「ちょい置き」用の製品なんですね。

以前から、スポーツ車向けの簡易着脱式スタンドというのはありました。
でも、機能優先で金属がむき出しのものだったり、
最初に自転車側に工具でアタッチメントをつけてから利用するものだったりして、
ちょっと優しくないな、って。

なるほど。カジュアルに街乗り自転車を楽しむには、少しハードルが高いかもしれない。

手にしたときのラバーの柔らかい質感も、
これまでの金属むき出しのスタンドとは全然違う優しさがありますね。
自転車のスタンドをこんなに愛おしく感じることがあるなんて思いませんでした。
これは愛着がわきます。

ありがとうございます。
これはアルミにラバー系の塗料を吹きつけてるんです。
IQOS(加熱式タバコ)と同じ塗装なんですよ。

IQOS! 意外な物の名前が出てきました。

ああいう、ポケットに入れていても馴染む手ざわりの自転車用品をつくりたかったんです。
MUNIの製品は触ったときの質感を重視しているんです。

紆余曲折、取捨選択の中で生まれたデザイン

スタンドは実際にいろんな自転車で実験したんですか?

そうですね。うちの職場はそのあたりにいつも10台くらい転がってるんで(笑)、
ラフでモックをつくって、とりあえず手当たり次第につけてみました。
たぶん、マウンテンバイク用のカーボンのものすごい太い
フレームとかでなければ、たいていの自転車で使えるはずです。

この形になるまでには、紆余曲折あったのでしょうね。

支持棒を伸縮させる機構をつけたことで、小径のタイヤの自転車でも安定するようになっています。
また、街なかだと自転車を置く場所がちょっと坂になっていたりすることもありますが、
それも棒の長さを調整すると安定します。

ステー側のロックも三段階あるので、たとえばクロモリの細いフレームでも
しっかり固定できるようになっています。

あと、これは裏話ですが、試作の過程でモバイルスタンド兼ロックにできないか、
という案があったんですよ。
カギの役割もつけてみよう、と。

ああ、それは名案だし、便利そう。

でも途中で、タイヤを回しながらうまいことやったら知恵の輪みたいに抜けちゃうことがわかって、断念しました。
知らなければ絶対気づかない動きなんですが。

ははは。それは絶対誰かが見つけちゃいますね。残念。

自転車にもう一度「愛着」を

『ライトベル』も『モバイルスタンド』も、すごくかわいいですね。

いや、むしろあまり『かわいい』だけにならないようにしてるんです。
今の女の人の生き方とかもそうだと思うんですけど、かわいいだけじゃないっていうか、
ちょっとエッジのあるほうが今っぽいですよね?

なるほど。
女の子らしいとかかわいいとかの性別のステレオタイプにとらわれない洗練ですね。

そうですね。
カラーも同じで、今発売している製品もパキッとした原色はつかわないようにしています。
ブラックも、厳密には真っ黒ではなくて『墨色』という色なんです。
グレーは『石板色』、イエローは『辛子色』、ブルーグレーは『浅葱鼠』で、どれも日本古来の色ですね。

この色はどうやって選んだんですか?

もうひとりのMUNIのデザイナーの中村さんと二人で、朝もやとか夕暮れとか、
アンニュイな時間帯に映える色味にしたいね、と相談して決めました。

たしかに、そんな時間帯に自転車に乗りたくなる色味ですね。

MUNIの製品を通じて自転車に愛着をもう一度取り戻してほしい、というような想いがあるんです。

自転車パーツって、機能だけで見たらどれでもいいわけで、
ママチャリならば最初についてくるものだけで十分、という人が今は多いと思います。
しかも今後、シェアバイクが定着したら、自分がわざわざ買う自転車ってなると、
自分の気に入った自転車じゃないと買わなくなるはずです。

そうですね。
ロードバイクにガンガン乗ってガンガン改造して……
みたいな人たちは残るだろうけれど、街をゆるーく楽しく乗る自転車、
というのは絶滅してしまうかもしれない。

はい。海外を見たらそんなことないんですけどね。
おしゃれのために乗る自転車、愛着を持って『選んで乗る』自転車っていうのが、日本では失われつつある。

その中で、MUNIは『選んで乗る』『選んでつける』
街乗り自転車用品になれたらいいな、という理想を持っているんです。
『普通のママチャリを買うけど、ライトだけはやっぱりこれをつかいたい』
というワンポイントだけのアクセントになるような商品も出していきたいな、って。

今後のラインナップにも期待

最初の2つのMUNI製品を見ているだけで、
今後もおもしろい展開があるんだろうなと期待がわきますね。

『MUNI』って名前は、唯一無二の無二とかユニークのUNIとかをかけたことばで、
「今までにないひとつのもの」っていう意味を込めています。
今後もそんな製品をつくっていければいいですね。

これからもブランド名に負けない、唯一無二の製品が出てくることを期待してます。
本日はありがとうございました。

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