COLUMN

Hatsuki Sugai chapter1

Hatsuki Sugai chapter1

「tokone」はどんなコンセプトのブランドなんですか?

“Wearable Art”(身に着けるアート)というコンセプトで、ジャンルを超えた
様々なアーティストとのコラボレーションによって生み出されるレッグウェアのブランドです。
自分でデザインもしますが、ディレクターとして作家の方とコラボレーションしながら生み出していくことが主となります。
タイツはコンセプトを決めてから作ることにしていて、最終的に「愛scream!」や「teatime」など、
作品であるタイツのタイトルとして、それぞれ名前をつけています。

「シーズンという決められたシステムに追われて制作することは無理だ」とわかっていたので、
タイツを履く期間である春/秋冬、に出すことを目安にはしていますが、
基本は作家さんのペースに合わせることを大事にしています。
個展やイベントに合わせて制作することもありますし、時間をかけたり、逆にやり取りが早い方だと
スピーディーに仕上がったりと、その方の性質によって、出来上がりのタイミングは様々です。

アベンジャーズみたいなイメージで、それぞれが独自に立って、並んでいたらかっこいいなと。
そんな風にタイツを作って、カルチャーを牽引するような存在であれたらなと思っています。

どんな人と一緒に作りたいですか?

「個としての存在感が強い人」とコラボレーションしたいと思っています。
「タイツというプロダクトを作って終わり」ではなく、タイツというツールをきっかけに、
その後も一緒に活動していける人を選びたいなと思っています。

すごく個性的なデザインですよね。
コンセプトを決めるときのルールがあったら教えてください。

アーティストとやり取りをするにあたり、「どんな過程があってこの作品性に辿り着いたのか。
どういう気持ちで作品と向き合って作品を生み出しているのか」など、相手を知ろうとすることから始めます。
コンセプトを決めることは、その作家の良い部分をクローズアップする作業だと言えると思っているので。
それ以上に、アーティスト自身が気がついていないような部分を引き出せたら最高だなと思ってます。

どんな人が購入していますか?

老若男女、人種も問わず、ご購入頂いております。

ブランド当初からのユーザーさんの一人に、自衛隊でお仕事されている方がいらっしゃるんです。
その子は日常的にはオシャレができないから、とっておきのときに履きたいと言ってくれるんですよ。
「仕事とは違った自分を楽しむもの」として買ってくれていることがとても嬉しいです。
「自己解放へと誘うブランド」もまたコンセプトのひとつでもあるので、老若男女人種問わず、
tokoneのタイツを履くことで新しい自分と新しい世界に出逢えたと思ってもらえたら最高ですね。

義足の方に向けたタイツも作ったと伺いました。
詳しく教えてください。

コラボレーションしているアーティストの一人に、須川まきこさんという女性がいます。
彼女はイラストレーターで、ご自身が義足のユーザーであり、
義足や義手などの身体的特徴を持った女の子たちを描く方なんです。

須川さんと話す中で、彼女の場合、タイツを履く際に一度義足部分でタイツを切らないと履けないということを知り、
切らなくてもいいニーハイソックスをtokoneから出そうと決めて制作しました。
須川さんが描いた、女の子同士が胸に手を当て合っている女の子を施して「Nurse」という名前を付けて。
カラーは左右で白と黒にして、離ればなれになっても二人はひとつというコンセプトでニーハイソックスを展開しました。
そして、須川さんと親しくなったことをきっかけに、彼女を中心とした義足の女性たちのファッションショーの、
ファッションディレクターとしてよく活動をともにさせて頂いております。

ファッションショーではどんなことを大事にしていますか?
また、どのような反響がありますか?

衣装を着て舞台に立って人前で見られることって、誰しもが経験するわけではない、すごい経験だと思うんです。
義足のユーザーの方々は、脚を失われた経緯は皆それぞれ。
でも、脚を失った体を人前で見せることへの勇気は同じで、計り知れないと思います。

そんなモデルの皆さんが自信を持って舞台を歩けるお手伝いを全力でするのが私の役割だと思って、毎回取り組んでいます。
実際出演された方は回を重ねるごとに経験値を積んで強く、より美しくなっています。

ファッションショーとして、出演者全員が一同に並んだ時に
「パワーバランスの均衡が保たれている状態」が最も重要であると思っていて。
そして、その状態を目指すにあたり、皆さんのメンタルケアも含めてのスタイリングだと思っています。
最終的に全員が各々の個性を発揮でき、「かっこいい!美しい!」とショーを見たお客様に思っていただけたら最高ですね。

実際、彼女たちは本当に神々しいほどの美しさで舞台を彩ってくれるので、会場は毎回感動の涙と拍手で溢れ返っていますよ!
「かわいそう」とか「痛々しい」などを超越した強さ、美しさは本当に気高くて、尊いなぁと、毎回教えられます。

そして、素晴らしいショーを生み出せた後の感動を皆で共有できることはかけがえのない瞬間であり、
私にとってはまさにライフワークだと感じています。

ファッションショーは服が主役になることが多い。
でも人間が主体なんですね

そうですね。いわゆるファッションショーには、ほとんど興味がなくて。服が先にあるのではなくて
「その人が何を着たら似合うだろう」「その人が美しく見えるものって何だろう」
という考え方のほうが興味があります。
人ありきで考えることに楽しみを見出しています。

菅井さんは人との関わり、人との縁をすごく大切にしていますよね。

どこで縁に結びつくか、どこで次のことに結びつくかって本当にわからない。
基本オープンマインドでいれば、いい人同士は繋がっていくかなって思っています。
そういうタイミングはキャッチしたいですね。

オープンマインドというのは?

いろんな感度を上げることですかね。
アンテナを立てて、それに身を任せることが大事だと思っています。
それに乗ってくれた人に対してはやっぱり嬉しいし、そのとき合わなければ「今のタイミングは違ったんだな」と思います。

菅井 葉月

<プロフィール>

菅井 葉月
「Wearable Art」をコンセプトに、自己解放へと誘うLegwear brand「tokone」のcreative director。
「kanaiyamamoto」のArt directorを経た経験を活かし、企業イベントの企画・ディレクションや、義足のアスリート達のfashion showのスタイリングなど、活動は多岐にわたる。

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