COLUMN

Akiko Nakayama chapter1

Akiko Nakayama chapter1

海外から帰ってきたばかりでありがとうございます。
次はどこに行くか決まってるんですか?

次は、アントワープとパリ、リヨンに行きます。
ベルギーのアントワープがメインです。
「Arsenal (アーセナル)」というバンドのアリーナ公演があって、映像を演出しにいきます。

今は、束の間の日本ですね。
今日はアトリエにお招きいただきましたが、気に入ってここを選んだんですか?

大学院を修了してから2~3年はパフォーマンスがベースの生活をしていたので、アトリエがいらなかったんです。
それで場所には困らなかったのですが、私がいない状態の作品を部屋に置いておいて、
ふと来たときに自然に作品を目にすることができるといいなと思って。
大学の助手さんだった方に相談しまして、このヒラミネギャラリーにたまたま空きが出て入れてもらいました。

Akiko Nakayama chapter1

これ全部、自宅の部屋に置いていたんです。
けど、部屋がぎゅうぎゅうになって息も詰まるし、
猛烈な紙の量なので置ききれなくなって……。

Akiko Nakayama chapter1

こちらは何ですか?

これは、韓国のアーティスト・イン・レジデンスに行った時のものです。
韓国伝統の「韓紙」の中から、薄いものを選びました。
かなり繊細に縞ができますね。
水の上に墨を浮かせて、洗剤や油で分離させて模様を作るんです。
平安時代に始まった墨流しという日本古来のマーブリングにヒントを得て、韓国の材料で研究しました。
今、台湾のギャラリーでこれを50枚ほど展示しています。
帰ってきたらこのあたりに飾ろうかな……。

最近の海外でのことなのですが……

あ!(自転車部品メーカーのウェブサイトだと聞いたので)最近旅先でおもしろい自転車を見つけたので、
せっかくなのでちょっと見てみてください……。

Akiko Nakayama chapter1

(トールバイクの写真を見せながら)これです!かわいいですよね。

こんなのあるんですね。

旅先でこういうDIY精神に出会うのが好きです。
自転車って聞いて、これこれって思ってました。

中山さんは自転車に乗りますか?

日本では徒歩と電車で移動するのですが、旅先のレンタサイクルはよく利用します。
アプリを入れてクレジットで引き落とされる形の。
主要駅とか美術館とか、観光客が行くであろう場所に停められる場所があって、すごく便利です。

よくレンタルするんですか?

バスとか電車をあまり確認せずに乗って逆だったり、ということがしばしばあるんです。
特に、トラムの場合は逆だけじゃなくてY字があったりしますよね。
途中で分岐して戻るのも混乱したり……
自転車だと何も気にせずに好きに寄り道できるし、興味のまま走れるので、すごく楽です。
行動がぐっと広がる感じ。

街なかでは何が気になるんですか?

Akiko Nakayama chapter1

椅子が好きです。
野良犬みたいな椅子がいいんですよ。人格があるみたいな感じ。
外に椅子があると誰でも来ていいよって受け皿があるみたいで、なごみますね。
あと、気になるものといえば、街のゴミも見るのが好きなんですよ。
工事現場にも足を止めますね。
「美術館・博物館」「工事現場」「ゴミ」は旅先で印象に残る3点セットかも。

工事現場に何があるんですか?

工事現場って、その国特有の個性が出るように感じます。
足場が金属なのか、木なのか、竹なのか、カバーするのか、
人がどういう働き方をしているのか...普段見ることのできない、
建築とか内装の構造も垣間見えますし、面白いです。

いつもインスピレーションを感じていて、オンとオフがなさそうですね!

どうやって物事を認識するかというのがそのままパフォーマンスに繋がったりするので、
オフのときもオンのための栄養素をとってるみたいになってます。
それに全集中するのが、生きがいかもしれません。

街歩きをしていて、
そのまま現地でのパフォーマンスに活かすことも?

素材は現地で買い足したり、水を汲みに行ったりもしますね。

たとえばどんなものを?

水はかなり重要です。
ブルガリアのソフィアは、ホカホカの温泉が街の真ん中で湧いてるので、
それを手で触ると一瞬で疲れが吹き飛ぶんですよ。
ふぁ〜って(笑)。

それをライブで使います。
劇場の前に湧いているところがあったので、ホカホカな状態で会場に運搬しました。
いつもよりも溶けがいいのか、絵にも不思議な効果があったような気がします。

あとは炭酸水も土地によって強さが違うので、効果を試してみたりもしますね。

液体以外も何かあります?

ソロパフォーマンスのときは写真も使うので、旅先で撮った外壁の写真を使ったり。
フィールドワークの中で思わず足を止めたものが、自分でも予期せぬ作品の新鮮さにつながります。

Akiko Nakayama chapter1
中山晃子

<プロフィール>

中山晃子
画家。色彩と流動の持つエネルギーを用い、様々な素材を反応させることで生きている絵を出現させる。
絶えず変容していく「Alive Painting」シリーズや、その排液を濾過させるプロセスを可視化し定着させる「Still Life」シリーズなど、パフォーマティブな要素の強い絵画は常に生成され続ける。
ソロでは音を「透明な絵の具」として扱い、絵を描くことによって空間や感情に触れる。
近年ではTED×Haneda、DLECTROCITY ART FESTIVAL(デトロイト)、ArsElectronica Fes(オーストリア)、Biennale Nemo(パリ)、LAB30 Media Art Festival(アウグスブルグ)等に出演。

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