大学で美術史を専攻していたんですけど、
その頃はアート関係の仕事をしようとは思っていませんでした。
フランスにいた時に、まわりの友達もやっているし、
せっかくだしと思ってインターンをしてみたのがきっかけです。
インターンについての問い合わせを近代美術の人に送ったら、全然違う人から電話があったんですよ。
その人が現代アート部門の方だったんです。
現代アートのことは全然わけもわからなかったけど、とりあえず面接に行って。
現代美術のことを聞かれてもちゃんと答えられないし、
すごい圧迫面接をされて、落ち込んで帰りました。
泣かされはしなかったけど、それくらいの勢い(笑)。
でもなぜか、採用されたんです。
面接では、「もっと勉強しなよ」(皮肉な感じで)って帰されたくらいだったのに。
あとから聞いたら「すごいやる気がある子が来た」ってまわりに言ってたらしくて。
今思い当たるのは……その人が自分が開く展覧会の招待状をくれたんです。
せっかくもらったので行ってみたけど、全然理解できなかった(笑)。
でも分からないなりに、感想を書いて送ったんです。
礼儀のつもりだったんですけど、それに「やる気」を感じたんですかね。
そのキュレーターはいろいろな世界を見せてくれて、
「自分もキュレーターになりたい」と思うようになってそのままフランスで働きました。
ギャラリーとアートフェアに行きます。
買う気がなくギャラリーに行っても、ギャラリストさんの説明を聞いて、
思わず買ってしまうとかはありますね。
もちろん「買いやすい値段」のものに限りますが!
家では飾ったり、しっかり箱にしまって保管しています。
私自身は作品を買っていて、気持ち的に「売れるのかな?」と思うことがあります。
数億円に変わっているとかだったら別だけど(笑)、
やっぱり作品への思い入れができませんかね?
ずっと家のなかで一緒に暮らしてきたわけだし。
作品を売る、といっても単純じゃないんじゃないか、と思います。
「どうするか問題」はありますね。
作品を買っていくと、かさんでいくので。
図録とか本も多いですね。
あまり買わないです。
断捨離も好きです。
でも、展覧会のチラシは捨てられないんですよ。
置き場所が決まってて、膨大な量が積みあがってます。
フランスにいたときは全部溜めてて、
これで作品をつくってもらおうと紙を使ったアーティストに依頼したこともあります。
「作品にしたら落ち着くんじゃないかな」って。
結局サイズの関係で出来なくて、代わりに違う作品をもらって、
預けていたチラシも引き取ってきました。
自分でチラシを作ることもあるので、苦労が分かるじゃないですか。
それもあって捨てられないのかも。
持ってたんですけど、マンションに撤去されちゃいました。
そうなんです。
民泊が流行ったときに駐輪場所が乱れて、張り紙をしていたらしいんですよね。
もう文句を言えないくらい後になってから気づきました。
しばらく乗ってなかったけど気に入ってたのに……。
自転車を持っていたときは、「銀座まで自転車で行けるかなー」とか夢が広がりました!
自転車って行動範囲が広がるし、行動自体も変わりますよね。
いつも行く道が変わります。
それは自転車に乗っていた時に感じたことでした。
自転車がなくなってあまり行かなくなった道があります。
春先には桜が綺麗で、フレッシュネスバーガーがあって、
よくお持ち帰りしてました。
いまは想像しています(笑)。
<プロフィール>
東出 菜代 Nayo Higashide
慶應技術大学文学部卒業後、渡仏。パリ第四ソルボンヌ大学修士号、エコール・ド・ルーブル博物館学課程を修了。
国立近代美術館ポンピドゥー・センター現代美術部門のインターンを経て、インディペンデント・キュレーターとしてパリで活動。
帰国後、Office de H(オフィス・ド・アッシュ)を設立。アートに特化したクラウドファンディングサイト「マイクロメセナ」の運営をはじめ、キュレーション、アーティストマネジメント、執筆に至るまで、活動分野は多岐に渡る。
多領域を横断するアートプロデュースを得意分野とする。