COLUMN

Etsuyo Okajima chapter2

Etsuyo Okajima chapter2

自由大学ではどういうお仕事だったんですか?

自由大学では延べ人数で1万人くらいの人に会っています。
社会的な肩書きを外した状態の人たちにたくさん会えたのは、すごく良かったなと思います。
その人の生まれ持った資質というのが、誰しもあると思うんです。
けれども、他人に与えられた価値観に無理に自分を合わせようとした時の違和感を、
どうやって埋めたらいいかわからなくて常に悶々と悩んでいる人たちもいます。
そういう人たちと接していく中で、その人の良さを発見し、
その人が次のステージに進むための場を作ることがすごく面白かったし、
喜びでしたね。
それがいろんな講義のバリエーションになってるかと思います。

講義のバリエーションはどうやって決める?

遊んだり、仕事したり、学んだり……
暮らすというのは循環しているものだから、
生活者目線で何を選び取るかというのを基準にして、
運営メンバーでカテゴリ分けしていったんです。
自分がどう生活するかというのと、
どう生きたいかというのはすごくリンクしているんですけど、
意外とそこを考えてる人って少ないんですよね。
何を食べて、どんな服を着て、どういうものに囲まれて暮らしたいか
というのに自覚を持ってる人って、来ている生徒の中でも本当に少なかった。
そこに気づいてもらうだけでも、随分変わりましたね。

どういうところで、その人の資質が見えますか?

その人にとって、何が美しいかですよね。
その人の美意識を呼び起こすきっかけを作る。
「あなたの美意識はこう」って限定することは言わないんですけど、
いろんな人と会ったり、いろんなものを見たり、いろんな考え方に触れる中で、
感情が動くところがあると思うので、「今動いたよね」となんとなく気づかせる。
ぼんやりしていた輪郭を磨いて、フォーカスしていく仕事をしてたなと思います。

すごく繊細な作業ですよね。

中には他愛もないことで傷ついちゃう人も、泣いちゃう人もいます。
自分自身のことを語る機会が今までなかった人ほど、衝撃は大きかったんじゃないでしょうか。
「みんなでワークショップをやって楽しい!」
みたいなことをやってるんですけど、毎回必ず自分の感想を言うプロセスを入れてたので、
自分の中に言葉が見つからないとか、
表現したいものがモヤモヤしすぎて言語化できないことに悩んで泣いちゃうとか、
自分はこう思ってるのに親とか会社から突きつけられた
期待される姿を演じていることに気づいて衝撃を受けるみたいなのを、
何回も目の当たりにしました。
カウンセリングにも近いと思います。

自由大学の経験がアーティストへの理解を深めてもいるんですね。
今のギャラリーのお仕事と繋がっていますね。
アートを考える上での切り口は?

私は、まずその人らしい表現ができているかどうかを見ます。
自分のアイデンティティとか表現に確信を持ってるかどうか、
というのはすごく見たいし、
それを受け取れる感受性は自分の中で磨いておきたいなと思います。

ものを持つことについてお話を聞きたいです。

昔は洋服がすごく好きで、 洋服ばっかり買ってたんですけど、
何年か前に断捨離してからは厳選してものを持つようになりました。

選ぶ基準は?

やっぱり情緒的なところになりますね。
それを着て気持ちいいかとか、肌触りがいいかとか、自分らしくいられるかとか。
そういう相性で見てます。
あと、茶道を8年前から習っていて、それも、ものを選ぶ基準に影響してます。
単に面白いとか奇抜っていうだけじゃなくて、
時間に耐えられるかという基準で選んでますね。
これを買うなら一生ものというつもりで買います。

普段の買い物に茶道の影響は?

茶道は道具が全部、自然のものじゃないですか。
土とか竹、炭とか鷹の羽根とか、昔だったら普通だったものが、
今は揃えるだけでも貴重なものになってしまったので、
そういうことに思いを馳せるようになりました。
自然って、1回壊したら再生するのに時間がかかります。
なるべく自然に、環境に負担がかからないような洗剤とかを選んでいます。
そういう意味での買い物は、かなり分析しますね。

自転車は乗りますか?

自転車、乗りますよ!
「トレック」に乗ってます。
もう7年くらいかな。
私はわりと自転車で通勤しますね。
自由大学でも自転車の講義を企画したことがあります。

どういう企画だったんですか?

自転車のマップ兼ルールブックみたいなのを作る講義でした。
最初、みんなに自転車に乗ってる時にどんなことが不安か書き出してもらうんです。
自転車専用レーンがあるけどそこに車が駐車されてて
迂回しないと通れないとか、曲がる時に手信号をどうするのとか。
それから、都心を自転車で走るのに慣れてる東京ナイトペダルクルージングと
一緒に街を2~3回走って、そこでまた感想を言い合って、
表参道界隈の自転車関連のショップとかカフェとかを調べてマップに落とし込んだんです。
やってみて、本当はもっとみんな自転車に乗りたいんだけど、
車への恐怖心をどうやって払拭するのかが課題だなと思いました。

Etsuyo Okajima chapter2
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<プロフィール>

岡島 悦代 Nayo Higashide
(LOKO GALLERY ディレクター)
レコード会社や銀行にてデザイン、WEBコンテンツの企画製作に携わる。
その後、家業の新規事業としてカフェ事業を構築。
自由大学では6年間キュレーターとして講義をプロデュースし、その間に三代目学長も務めた。現在は代官山にあるコマーシャルギャラリーのディレクターを務める。

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