COLUMN

Nana Watanabe chapter1

Nana Watanabe chapter1

元々はハイブランドでデザイナーとして働いたあと、
浴衣ブランドを手がけ、現在のARROを立ち上げられました。
ゆるやかに決めてきたのですか?

ゆるやかに、成り行きでやってきた感じです。

なぜアクセサリーに?

「ひとりでやりたい」というのがありました。
洋服とか浴衣だと、たくさんの人の力を借りないとできないところがあるんですけど、
私としてはひとりで1から10までやりたくって、
自分の手の届く範囲でできるのがアクセサリーでした。
販売の委託もしやすいんです。
「立体的なものを作るほうが得意だな」というのもあって、
それができるのがアクセサリーだと思い、始めた感じです。

どのようなテーマのアクセサリーなんですか?

「架空の国の装身具」というテーマでやっています。
「架空の国」という以外は、がっちりとは決めていません。

架空の国って?

自分の頭のなかにある世界。
楽園かな。
原始的な時代なんだけど、
ちょっとハイテクみたいな……。

シーズンごとのテーマはどう決めてるんですか?

結構思いつきみたいなところが大きいです。
でも、夏だったら海っぽいテーマにしたり、
冬だったら濃い色合いのものにしたりします。
作ってみたいものが出てきたら、
それをテーマにできるかなと考えます。

何からインスピレーションを得ますか?

本をたくさん読んだり、旅行に行ったり、
植物園に行ったりすることが多いです。

作業はご自宅でするんですか?

そうですね。
でもアイデアの元を考えるのは家だと集中できないので、
コメダ珈琲とか(笑)。
それか、移動中ですね。
アイデアをつめていくのは家です。

「う~ん、今日は思いつかないな」ってことはありますか?

思いつかないことはないけれど、降ってくるタイプではないです。
紙とか本を見ながら「う~ん」と頑張って考えるタイプ。
なので、めっちゃ考えれば出るかなと思ってます。

アイデアのおおもとはスケッチしながら?

本当のおおもとは頭のなかだけど、
忘れないように落書きみたいにメモはしてる。
けど実際のアクセサリーは立体だから、あまり参考にならないんですよね。
紙に描いて切って、それを立体にして……を繰り返します。

あとは手でやってみて……となるんですね。
それがひとりの醍醐味でもあるのでしょうか。

洋服だったらパタンナーに依頼して、
理解してつくってもらうことになるので、
そこまではできないんですよね。

洋服はイメージ通りにならないこともありましたか?

そういうこともありました。
コレクションブランドにいたというのもあって、
パタンナーもクリエイターだし、ディレクターもいるので。
思い通りにならないこともあって、
私はそういうのは得意ではないと気が付きました。
今はかなり自由にできますね。
販売は手伝ってもらってるのですが、ほかはひとりです。

ARROのアクセサリーは原色が多いイメージです。
お好きなんですか?

色が好きというのもあるけど、
民族系のデザインって難しくなくて好きなんです。
どこの国も自然にあるものから模様に落とし込んでいる。
すごくシンプルな落とし込み方なんだけど、
自分らしさを出しやすいというのがあります。
民族系のデザインは、意外と世界の離れた地域のものが似ていたりとか、
元が一緒だったりするんですよ。

色使いの感覚も自然から得ることがありますか?

植物から得ることが多いですね。
でも街を歩いていて、
「この人の色の組み合わせがいい」と覚えていることもあります。

最初のアイデアはどうイメージするんですか?

アクセサリーを付けている人と連動してイメージしてます。
「鳥」みたいに具体的なのは、ものから直結してイメージしています。
テーマに沿って、実際には存在しないものを考えてるパターンも。
あとは「透明なものに刺繍してみたい」とか、
テクニック的にやってみたいことから考えることもあります。

理解してもらえないものもあるので、
分かりやすいものも置くことで、
安心して見てもらえるようにすることもあります。

抽象的なデザインだと説明を求められることも?

「何の生き物なの?」とか、具体的に何だか分からないと
納得してくれない人もなかにはいますね。
蛾のモチーフのアクセサリーも「蛾ですか?蝶ですか?」
と言われることがあるんだけど、私としてはどちらでもいいんです。
「蝶だと言ってごめんなさい」なんて言われても、
「謝らなくていいんですよ」って。
正解があるかのように育ってるから、
正解が知りたいと思うのかも。
気に入っていれば私としてはどちらでもいいし、
自分で受け取ってもらえたらいいんです。
外国人は「バタフライ!」と言って買っていったりしますね。
あと「どうやって作ってるの?」「手刺繍なの?」とかも聞かれます。
ストーリーが好きだなと。
「手刺繍じゃないのに何でこんなに高いの?」
という方もいますね。
ちなみに、今、
機械刺繍でやっているレベルのものをつくろうとすると
相当なプロの人じゃないと難しいし、
それこそ値段もゼロがひとつ違っちゃうかなと思います。

工場に刺繍を依頼するときは、言葉でイメージを伝えるんですか?

型紙みたいのをデータでつくって、それを渡して説明しますね。
工場の人も何だか分かっていないときもあります。
私は品番だけで送っていても、向こうからは
「鳥」って書いた箱に詰めて送られてきたこともあります(笑)。

これからについてどんなことを考えてますか?

ちょうどブランドとして安定してきました。
今まで洋服に携わってきたので、
今は「アクセサリーだとこんなに自由が許されるんだ」
と分かってきたところです。
もうちょっと違う展開もできるのかもしれません。

Shiho Yokoyama chapter1
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<プロフィール>

渡辺 奈菜
[ARRO/designer nana watanabe]
アクセサリーデザイナー/アパレルでのデザイナーを経験した後、刺繍を用いたアクセサリーブランドARROを立ち上げ。世界中のテキスタイルをヒントに現代的な解釈でデザインし、空想上の楽園に存在する装身具を表現している。オリジナリティあふれる色彩感覚と発想力で国内外で注目を集める。

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