COLUMN

Tanja Sillman chapter1

Tanja Sillman chapter1

アートを対象に研究しているんですよね。
日本にはどれくらい?

2010年に来日しました。
フィンランドの大学を卒業して仕事をしていたのですが、
タイミングを見て日本の大学に入りました。
最初は日本とフィンランドを行ったり来たり。
日本でフィンランドのデザインを
輸入・販売する会社などで働きました。
まだ大学でいろいろ研究したいテーマがあり、
アートに関する研究をしたかったんです。
今は研究をするだけでなく、
アートプロジェクトに関わるなど実践もできています。
今は “いい感じ”と言えますね。

どんな研究をしてるんですか?

「アートディレクターやキュレーターがいない、
自然発生的なアートイベントをどう作るのか」を
テーマに修士論文を書きました。

自然発生的なアートとは?

美術館やギャラリーは、
キュレーターが企画をして展覧会をします。
ストリートにはキュレーターがいなくて、
グラフィティが日々変わるんです。
1カ月後に道を通ったら、違っているかもしれない。

東京はストリートアートを研究するのに面白いんですか?

面白いです!
海外は壁画プロジェクトの波があって、壁画が増えています。
古い街のイメージをアップデートして
観光客を呼ぶためというのもありますね。
観光客がかっこいいグラフィティを写真に撮ってアップしたら、
宣伝にもなるんです。
お金の話にも繋がっている。
日本の公共空間は法律的にも厳しいし、
壁画が広告の扱いをされて制限を受けます。
それに壁画は、落書きとか遊びのように思われてしまう。
でも海外では作品として捉えられます。

確かに私たちは作品としての壁画を
見慣れていないかもしれません。

海外で街を歩いていて壁画が出てくると、
すごくインパクトがあります。
2014年に東京で「#Bction」というイベントが、
取り壊し予定のビルで行われました。
アーティストが集まって壁に直接絵を描き、
1階のフリーウォールはだれでもその上にもさらに
絵を描くことができたから
どんどんストリートのように変わっていた。
日本では屋外はルールが厳しいけど、屋内ならできる。
こういう屋内での自然発生的なイベントは大切なんです。
それに、日本のライブペインターはレベルが高いんですよ。
ライブペイントのシーンがちゃんとあるし、歴史だってあります。

ルールがあるからこそ生まれた?

アートってそういうものですよね。
歴史的に見ても社会的な状況とルールが厳しいときほど
アートムーブメントが起こりやすい。
社会の厳しさや差別の状況があれば、アートは強くなる。
日本でも同じ流れがあって、面白いと思っています。
日本でも(ストリートアーティストの)バンクシーは知られているし、
(グラフィティアートに着想を得た作品で知られる)バスキアの
展示には人が並んでいました。
でも屋外となると、
壁画アートに価値がなくなってしまうんですね。

有名なアーティストは知っていても、
自分の価値観でストリートアートに面白さを見出す人は
少ないかもしれませんね。

フィンランドでも、
新しいムーブメントに対して人の反応は遅いです。
でも壁画に関するリテラシーは、昔から街のなかにありました。
「リーガルウォール(Legal wall)」と検索すれば、
世界中の街の壁画が見られます。
自由に絵を描ける場所がなければ、
若い人のチャンスは生まれません。

日本に来てすぐにこのテーマに興味を持ったんですか?

現代アートとストリートアートにはずっと興味があります。
9年間ぐらい、色々なアートイベントとギャラリーに行きました。

Tanja Sillman chapter1
Tanja Sillman chapter1

<プロフィール>

Tanja Sillman
日本のオルタナティブ・アート・プロジェクトとストリートアートの研究者。フィンランドのユヴァスキュラ出身。東京に9年間在住。日本のアーティストのサポートと日本と海外のアートプロジェクトのコラボレージョンを目的としている。90年代のハードテクノとクラブが好き。

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